デザイナーの言語化問題② 新人デザイナーへ伝えたい「なんとなく」をなくすためにやること

こんにちは。デザイナーのizumiです。
以前エンジニアさんへ指示を伝える際の私なりの留意点をまとめましたが、今回は私が過去にOJTとして新人デザイナーさんに伝えてきた、自分の思いを言語化する際に考えてほしいポイントを紹介します。

1. その言葉で相手は納得するか

新人デザイナーさんにチラシでもバナーでも何か一つのものをデザインしてもらった時、まずはそのデザインが自分だけの価値基準になっていないか、独りよがりになっていないかを確認します。
大抵の場合、最初のデザインでは相手(クライアントや世に出たその成果物を目にする人)のことは頭から抜け落ちていることがほとんどなので、まずそれを思い出してもらいます。

  • 求められていることは何か
  • 求められていることに対して、そのデザインは応えられているか
  • その思考を言語化できるか

...といった質問をしながら、独りよがりになっていたポイントを一つずつ噛み砕いていきます。
自分の説明を聞いて相手が納得するかどうか、自分だったらそれを聞いて納得するかどうか、をとにかく何度も考えてもらいます。

デザインは一方通行でなく相手(受け手)との双方向のやり取りなので、自分だけでなく相手の視点も持つことが大切です。
その違いを言葉に落とし込めるか(言語化力)、それを意図通りに伝えられるか(伝達力)を、技術的な話とは別に最初に身につけてほしいと思っています。

2. 「良い/悪い」と「好き/嫌い」を区別する

独りよがりの言葉を減らすためにできることとして、「良い/悪い」と「好き/嫌い」を区別することがあります。
「良い/悪い」は価値判断で、「好き/嫌い」は感情です。

自分が「良い/悪い」と判断したものの裏側に実は自分の感情(例えば青色が好きなど)が入り込んでいないか確認します。
慣れるまでは混同しがちですが、慣れてくれば自然と分けて考えられるようになるので根気強く指摘します。

デザインを長く作っていくうちに「どちらにも同じくらい良いところがあって最後は好みで選ぶ...」というシーンは必ず訪れますが、新人のうちはとにかく分けて考えてもらうようにしています。

3. 「なんとなく」を禁止する

さらに言語化を癖づける方法として、一番早道なのは「なんとなく」を禁止してしまうことです。
なんとなくを禁止すると分からないなりに言語化せざるを得ないので、必然的に言葉を探すと同時に、なぜそう思うのかを見つけようと思考が動き出します。

例えば、

  • 道端に咲く花をきれいだなと思った

きれいだと思ったポイントは

  • 好きな色の花びらだったのか
  • 花びらと葉のコントラストなのか
  • 朝日に照らされて花びらについた昨夜の雨の水滴がキラッと光って美しかったのか
  • 昔この花を見て一緒に美しいと笑ったことを思い出したのか
  • その花言葉がそれを見た心象風景とマッチしていたのか etc...

といった具合に、なんとなくで済ませようとしていたところを言語化しようとすると否応にも解像度を上げざるを得ず、実は裏側に様々な心の動きだったり、思い出や記憶とリンクした心象風景だったりがあることに気づいてくるのです。

慣れるまではけっこう疲れますが、一つのものを見た時にそこからどれだけイメージを膨らませられるかがデザイナーの引き出しの数ですし、それを増やすために避けては通れないかなと思います。

まとめ:ツールとしての言葉を磨こう

最初は意識しないと難しいかもしれませんが、意識して訓練することで言語化力はアップします。
そして自分のデザインを自分の言葉で説明できるようになると思考が捗ります。
ツールとしての言葉を磨くことがデザイン力・説得力の向上にも繋がるので、根気強く続けてもらえたら嬉しいです。

izumi

アートディレクター/デザイナー

2022年入社。
桑沢デザイン研究所卒業。メーカーでの企画開発、制作事務所でのグラフィックデザイン、地域おこし協力隊でのFab施設の運営やフリーランスなどを経て、マイロプスへ入社。
休日はだいたい読書か映画鑑賞か散歩をしています。

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