通勤とデザイン

こんにちは。デザイナーのizumiです。
最近引っ越しをしたところ、リモート勤務が当たり前の今「デザイナーが通勤する意味」について改めて考える機会になりました。

1. 地方移住を通して感じた通勤の価値

そもそも最初に通勤の意味について痛感したのは、コロナ禍の前(2017年)に高知県の中山間地域に住んでデザインの仕事をしていた頃でした。

高知では職場まで徒歩20分の距離を自転車で7〜8分かけて通勤していました。
その前の職場は東京の銀座(三丁目)で、電車を三本乗り継ぎ一時間半かけて通勤していたのでかなり大きな変化です。
特に毎朝の満員電車には辟易していたものですから、通勤時間が短いのはメリットしかないと思っていました。

しかし実際に高知で生活し始めてみると、生活圏と距離が近すぎて気持ちの切り替えができないというデメリットが見つかったのです。
「通勤は仕事と生活の気持ちを切り替えるスイッチだったんだ」と気づくまでに時間はかかりませんでした。
昼休みに家に帰ってご飯が食べられるというメリットはありましたが、それもまた気持ちが切り替えられない要因でもありました。

2. どこを通って、何を感じるのか

「通勤は仕事と生活の気持ちを切り替えるスイッチ」という視点で振り返ると、「どこを通って、何を感じるのか」が大きいことが分かります。

例えば、主要ターミナル駅で乗り換える時の大型広告。季節ごとに変わる商業施設のショーケース。街路樹の葉の色の変化や花の香り。商店街で流れる音楽。電車内や駅のホームでの人々の行動や服装。時期によっては選挙運動の宣伝カーなども。通勤の中でこれらを見たり、聞いたり、嗅いだりすることで、世間の流行や関心事、空気感を肌で感じることができます。

これを徒歩20分の距離で感じることはなかなか難しい。
ある程度の時間をかけてその場を(しかも日常的に)通ることによって、デザイナーにとって必要な、コスパやタイパでは測れない肌感覚が身につくのではないかと思います。

職場が銀座の頃は通勤が大変ではあったけれど、改札口から出口まで続く松屋銀座のショーケースの、季節やイベントごとの変化を見るのが毎日の楽しみでもありました。
これはリモート勤務では得られなかった経験です。

このように毎日同じ場所を通ることにも意味があると思うと、通勤が辛いと感じている方も、気持ちのスイッチが少し切り替えやすくなるのではないでしょうか。
今はスマホで見られるコンテンツが充実しているのでつい意識を画面の中に飛ばしてしまいがちですが、毎日それではもったいない。一次情報は画面の中ではなく、あなたの周りにいくらでも転がっています。
その通勤で自分が五感で何を感じているかにも「意識の目」を向けてもらえたらと思います。

3. 流行や空気感を日常的に感じるのが大事

冒頭で書いた引っ越しにともない、地上から地下鉄へ、乗り継ぎが1回から0回へと通勤ルートが変わりました。
そして移動がスムーズになりストレスが減った反面、乗り継ぎがないと寄り道もしづらいこと、しかも地下鉄だとホーム上から見える風景の変化がないことに気がつきました。
少しもったいないことをしたような気もしていますが、これもまた一つの気づきとして次に住む場所を探す際のヒントにし、流行や空気感をもっと感じられる別の仕組み化を考え中です。

私はこれまで都内4箇所と高知の中山間地域で働き、コロナ禍後はリモート勤務もある程度経験してきました。
住む地域に関係なく、自分にはフルリモートは合わないと感じる理由はこれまで述べてきた通りです。

絶対にコレ!と言える正解はありません。これからも「通勤との良い関係」をデザインするために、私の試行錯誤は続きます。
引っ越しが増えるこの時期、みなさんが自分の状態に合った通勤を形づくっていけますように。

izumi

アートディレクター/デザイナー

2022年入社。
桑沢デザイン研究所卒業。メーカーでの企画開発、制作事務所でのグラフィックデザイン、地域おこし協力隊でのFab施設の運営やフリーランスなどを経て、マイロプスへ入社。
休日はだいたい読書か映画鑑賞か散歩をしています。

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