(書評)ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと
こんにちは!マイロプスのデザイナーのishidoです。
日々、弊社で様々なデザイン業務に携わっていますが、デザイナーとして"デザイン"がビジネスに対してどんな役割を果たしているかもっと深く理解をしたいと思い、今回表題の本を読んでみました。
また、これまでクライアントから具体的な制作依頼をされるケースが多かったのですが、ブランドの核となる部分から一緒に考えていくケースも増えつつあるためブランディングの概念を改めて深掘りしてみたいと感じたことも本書を手に取ったきっかけのひとつとなります。
ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと
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HI(NY) 共同代表。クリエイティブ・ディレクター、アートディレクター、グラフィックデザイナー。NYの美術大学 School of Visual Arts グラフィックデザイン科を卒業。MTV、ブランディング・エージェンシーのThe Seventh Art を経て2008年、HI(NY)を設立。近年の主な仕事に、米国コカコーラの新商品ブランディング&パッケージデザイン、国連の展覧会デザインなど。アトランタのHigh Museumやパリのコレットにて展覧会に参加。One Show、 Graphis、 GD USAなど多数受賞。AIGA会員、NYアートディレクターズクラブ会員。 本の概要:
ニューヨークで活躍する女性アートディレクターの視点からブランドを作ることの重要さ、日本と世界のデザインに対する認識のずれを解いています。
ブランディングとは
本書では、"ブランディング"という言葉が多くちりばめられています。 ブランディングの概念を下記のように解釈しています。
- 戦略的に企業、商品やサービスの強さを引き出し
- 環境や時代、消費者のニーズを踏まえながら
- 消費者や社会に伝わるようなかたちで表現し
- 企業のブランド価値を向上させる
(p16より引用)
つまりブランディングとはブランドの価値を向上させることです。
企業の想い、背景を汲み取り伝えるべき人に伝える仕組みを作っていくことがブランディングの概念なのですね
良いブランドの指針
本書には、実際にブランディングをしていく過程も描かれています。
最初のステップでは、企業の価値を引き出すための指針が挙げられています。
- AUTHENTIC 偽りがない
- VISIONARY ビジョンがある
- VALUABLE 価値がある
- COHERENT 一貫性がある
- SUSTAINABLE 持続可能である
- FLEXIBLE 柔軟である
- DIFFERENTIATED 差別化されている
- COMMITTED 約束を守っている
- EMOTIONAL 感情を引き出す
- SOCIAL 社会貢献の要素がある
- ENVIRONMENTAL 環境に優しい
- GOVERNANCE 企業倫理/ガバナンスがある
- POSITIVE ポジティブである
(p102~103より引用)
"社会貢献の要素がある"、"ビジョンがある"などは企業を作る上でまずは欠かせない要素のように思いますが"環境にやさしい""持続可能である"など、長期的な視点から見た要素も言葉にされており、強いブランドを築くための参考になりました。
一度自社の指針と照らし合わせてみるのも参考になるかもしれません。
良いブランドを伝えるための情緒的価値とは
せっかく良いものをつくり素晴らしい志を持ってビジネスをしていても、伝わらなければ意味がありません。(p57より引用)
また、日本は良いもの作り(実質的な価値のあるもの)をするのは得意であるが、"情緒的な価値"を上げることは苦手だと触れています。
情緒的価値とは、デザイン、ヴィジョン、ストーリー、ミッション、などを指しており
実質的価値は品質、性能などを指しています。
良いもの作りはまず第一に大事なことですが、長期的な観点で考えると"そのとき売れれば良い"のではなく"長期的にファンを獲得する"という視点も重要になるかと思います。
そこで、企業自体の個性(ヴィジョン、ストーリー、ミッションなど)を見つめ直し、
誰にどう伝えていくのか。そしてまたそこからどんな商品を作っていくのかを改めて考えることがブランドを作る上で核となる部分かと思います。
社員全員が同じ方向を向くきっかけにもなるためブランディングは外部に伝えるだけでなく、内部にも大きく作用する概念だと感じました。
また、五感の中でも印象に残りやすい視覚的に優れたコミュニケーションを展開していくのはとても有効な手段といえると述べています。
視覚的に優れたコミュニケーション
日本では聞きなれない言葉"ビジュアルリテラシー"という言葉があります。
なかでも、視覚的に伝える手段である「Visual Communication(ビジュアルコミュニケーション)」は非常にパワフルです。
人が耳で聞いた情報を記憶している割合は10%。
そして、同じ内容をイラストとして見せた場合が35%を記憶しているという実験結果が出ています。(p58より引用)
とのことです。
ですので、ビジュアルのコミュニケーションを強化していくことは
情緒的価値を打ち出す上で強力なコミュニケーション手段といえるとのことです。
一貫性のある世界観作りをするために
情緒的価値をあげるためにビジュアルコミュニケーションは大事だとわかりました。
具体的にどのように打ち出して行けば良いのでしょうか。
ビジネスから発せられる全てのイメージが矛盾なく同じ方向を目指していて世界観がぶれることなく一貫していることです。(p65より引用)
例えば、洋菓子のブランドを例に取った場合にタッチポイントは下記のようになります。
- 専売店舗/デパ地下の売り場コーナー
- ウェブサイト/eコマースサイト
- ソーシャルメディア
- テレビCM
- パンフレット
- 贈り物
- 新聞や雑誌の記事
- 広告
- 口コミ
(p64より引用)
全てのタッチポイントでお客様が感じるルックアンドフィールが、このブランドの世界観を矛盾なく表現していなければなりません。(p67より引用)
ユーザーを視覚的なイメージで包み込み良い体験を提供することで好きになってもらう仕組みを作ることが大事なのですね。
また、世界観を矛盾なく表現することでこの会社には一貫したビジョンがあるというメッセージを発することが出来、ユーザーに信頼してもらうことがブランドの価値向上に繋がるのだと思いました。
ブランディング作業におけるデザイナーの役割
企業の強みや特徴を引き出し伝えたい想いを具現化すること。
これがデザイナーとして欠かせない役割だと感じました。
良いもの作りをしている企業にコミットし製品やサービスを世の中に伝わるように可視化して
広げていくお手伝いをしていきたいと強く感じました。
まとめ
- ブランディングとはブランドの価値を向上させること
- ブランディングは外部に伝えるだけでなく、内部にも大きく作用する
- 視覚的に優れたコミュニケーションを展開していくのはとても有効な手段
- ファンを増やす仕組みを作ることでビジネスに作用をもたらす
本書ではブランディングの重要性と、ブランディングのステップを詳しく書いており
デザインをする上でとても参考になる本でした。
最近、自社内でも自社ブランディングを行うプロジェクトがはじまり、ミッション・ビジョンの再構築から、視覚的な訴求方法にいたるところまで全てを行う予定です。
考え方は本書を参考にすることもあり、
まずは、自社で試してクライアントに適応していきたいと感じる部分が多々ありました。
ブランディングやビジネスについて興味ある方には参考となる本だと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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