デザイナーが『誰のためのデザイン?』を改めて読んで感じたこと

デザイナーのizumiです。
少し前のことになりますが、7月に社内研修として輪読会を行いました。課題図書は『誰のためのデザイン? 増補・改訂版 認知科学者のデザイン原論』(D. A. ノーマン著、新曜社)。参加者はデザイナーからエンジニアまで総勢7名です。

ちなみにこの本、初版は学生時代に読んだことがありましたが、改訂版は実は初読です。

UIデザインを意識する立場になって改めて読んでみると、案外忘れている内容があったり(苦笑)、感覚的には理解していたけれど言葉にされて再認識する考え方があったり...と、改めて勉強になりました。ウェブ業界に来て半年ほどのこのタイミングで読んだことで、特にインタラクションを伴うデザインについての理解が深まったように感じます。

本書で述べられている「良いデザインの原則」をざっくりまとめると、こんな内容です。

  1. アフォーダンス:どんな行為が可能かを感じさせる、モノと人の関係性。
  2. シグニファイア:人々に適切な行動(何ができるか、何が起こるか)を伝える、マークや音・知覚可能な標識のすべて。
  3. 制約:「物理的・文化的・意味的・論理的」それぞれの面に紐づく、行動にまつわる制限。
  4. 対応づけ:使い方を連想させる、要素同士の関係。マッピング。
  5. フィードバック:システムの状態や行為の結果を知らせる表示、音、光などの手段。
  6. 概念モデル:あるモノがどう動くかについての説明。人の中に構築されたメンタルモデル。

少し話が逸れますが、このような内容を読んでいると、自然と初版を読んでいた頃(学生時代)のことが思い出されます。

当時私はプロダクトデザインを専攻していたのですが、先生からはことあるごとに「デザイナーになっても使用者目線を忘れるな」と言われていました。
これはまさに、本書で語られている「人間中心デザイン」のこと。つまりこの輪読会は、「ものを作る際にはデザイナー(作り手)とユーザー(使い手)を分けて考えるのではなく、その視点を行ったり来たりすることが大切だ」という先生方の教えを再度思い起こすきっかけにもなりました。デザイナーかどうかに限らず、ものを作る側の人間はこの教えを常に忘れずにいたいものです。

話を本題に戻します。
本書のタイトルである『誰のためのデザイン?』。その答えは「人間のためのデザイン」つまり「ユーザーのためのデザイン」になるわけですが、よく考えてみると至極当たり前のことです。
それではなぜ、そこから逸脱した「独りよがりなデザイン」が生まれてしまうのでしょうか。私が思うにそれは、デザイナーがキャリアを積んでいく中での「慣れ」や「忘れ」、果てには「頭の中だけの架空のユーザー像」に向けてデザインしてしまうことで起きるのではないでしょうか。
『自分も一人のユーザーであることを忘れずに、作り手と使い手の目線を行き来しながらデザインをする』。一見簡単そうで意外と忘れがちなことかもしれませんが、独りよがりデザイナーにならないために、この小さな繰り返しこそが大切なのだ、と痛感する日々です。

改めて今回の輪読を通して良かったことは

  • 「良いデザインの原則」に基づいてUIを評価する際の言語化の精度が上がった
  • 作り手と使い手の目線を行き来することの重要性を再認識できた
  • 加えて、輪読ということで普段の業務ではあまり関わる機会のないエンジニアさんの意見にも学ぶところがあった

まとめ

令和を生きる私たちは、すでに優れたUIを持つ製品に囲まれて生活しているために「良いUI」については当たり前すぎて感度が低くなりがちです。それもそのはず、そもそも良いUIはストレスなく使用できるわけですから、「良い」とすら感じる間もないわけで...。
だからこそ逆に、良くないUI(独りよがりなデザイン)に出会った時は余計にストレスを感じるのでしょう。UIデザインの観点から見ると、後者からももちろん学びはありますが、どちらかと言うと前者から学びたいものです。
気を抜くと通り過ぎてしまいそうな良いUIを見逃さないために、使い手としては感度を高く、作り手としては観察眼を鋭く。気づきや学びを柔軟に取り入れられるデザイナーでありたいなぁと思いました。

余談ですが、読んだあとしばらくは「これには○○できるというアフォーダンスがある...あれは□□なことをシグニファイしている...」と、街中にあるものを分析するモードになるのが面白いのでおすすめです(笑)

『誰のためのデザイン? 増補・改訂版 認知科学者のデザイン原論』(D. A. ノーマン著、新曜社)

izumi

アートディレクター/デザイナー

プロダクト→グラフィック→現在WEB。
本と漫画は雑食。
2021年まで3年ほど高知県に住んでいました。

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