デザイナーこそ写真撮影をやってみよう

こんにちは、折坂です。
あまり他人に話すこともなかったのですが、ここ数年で写真が趣味のひとつになりました。
写真撮影の気持ちよさは、目の前の被写体の魅力をその枠のなかに閉じ込めたときの快感のような"してやった感"だと思っています。
昔はそんな気持ちはさっぱりわからず、記録として撮影するのみでしたが、
この"してやった感"は、なかなか中毒性が高く、昔は理解できなかったアイドルの撮影や撮り鉄、飛行機や鳥の撮影にハマる人の気持ちも 今はすごくわかるようになりました。

デザインの幅を拡げるための写真撮影

近年デザイン領域は、従来のビジュアルやもの作りからUI・UX・サービス・ビジネスなど、年々広くなってきており、 従来のいわゆる美大や専門学校卒業のデザイナーだけではなく、異業種から転身してデザイナーになる人も増えてきました。
そんなデザイナーの方々におすすめな勉強の一つが写真撮影です。
デザイナーは日頃から世間の様々な事象に対する観察・活動・距離感が大事であり、
良いデザインを見るのはもちろんのこと、日々のニュースやサブカル的な内容まで幅広く知識をインプットして、それを自分なりに解釈すること、そうした積み重ねが、デザイナーの大きな武器である発想力とアナロジカルな思考を養い、さまざまな局面においてクリエイティブな力につながっていきます。

グラフィックデザインやウェブデザインの現場では、写真を取り扱ったり、カメラマンと一緒に仕事をすることも多く、写真や撮影の知識があると仕事がスムーズに進むことは間違いないです。
もちろんUXデザインなどでのデザインリサーチの場で記録に近い性質の撮影においても、露出やホワイトバランスだけでも知識をいれておけば、よりわかりやすい写真を撮れるようになるでしょう。
そして、昔は機材が高価でしたが、近年はデジタルカメラやスマートフォンの普及によって、
比較的簡単に始められるようになりました。
制作の基礎技術やクリエイティブ力向上のためにも写真撮影の勉強をしてみてはいかがでしょうか?

デザインの要素としての写真

画像と写真の違いについて、自分は以下のように考えています。

  • 画像:ただ写っているもの
  • 写真:見た人にメッセージを伝えたいもの

写真にはもの凄くパワーがあります。
パワーというのは、非言語的で説明しにくいのですが、たとえば動物の写真であればあたかもそこにいるような躍動感、夜景の写真であれば光と闇のコントラストから成り立つ非日常感のようなものでしょうか。
記録ではなく記憶やストーリーを想起させるものだと思っています。

そして、ウェブデザインやグラフィックデザインをしていると、
どんなに写真以外のグラフィックデザインがバシッと決まっても写真一枚の使い方で生死が決まるなんてことはあります。
写真単体でいい写真だったとしても、その良さをデザインのなかで最大に引き出すのがデザイナーの仕事であるため、デザイナーは自分が撮影しないにしても写真のクオリティーを上げる努力や写真への理解が必要となります。

写真撮影を勉強するメリット

写真撮影を勉強していくとこんな良いことがあります。

  • 伝える力が上がる
  • 作る力が上がる
  • ディレクション力が上がる

・伝える力が上がる

写真撮影の勉強を始めてしばらくして気がつきましたが、写真は構図、被写体や光の扱いに関する定番パターンが先人によってきっちりと言語化されています。
プレゼンで、デザインやその意図について解説するとき、
そのなかで使われるものの言い方を使わない手はないでしょう。

なぜこの構成なのか?
なぜこの光の入りかたなのか?
なぜ見た人に意図した感情を与えられるのか?

もちろん人が見たものから受ける感情はそのあとのアクションにも密接に関わるので ビジュアルデザインだけに止まらず、多くのデザインのプレゼンでも流用できるでしょう。 上記のデザインプレゼンにも活かせる解説は、こちらの本に詳しく書かれておりました。

cover.jpg
写真がもっと上手くなる デジタル一眼 構図テクニック事典101

・作る力が上がる

ファインダー越しに被写体を見た時、「何が被写体のらしさなのか?」
「どうすれば強調したいポイント、訴えたいメッセージが写せるのか?」
被写体とその他の要素の組み合わせや構図を考えます。
動物などが被写体だったりするとグラフィックデザインのように考える時間がないこともあります。
一瞬で被写体を切り取りメッセージを加える、写真撮影はこのような行為をずっと繰り返します。これは、直接デザインが上手くなるわけではないですが、決して不必要なトレーニングではなく、アスリートが日々行う筋力トレーニングのようなものだと思っています。

・ディレクション力が上がる

写真や撮影に関連する用語や有名カメラマンの作風を覚えることで、カメラマンに欲しい写真をオーダーしやすくなります。
ビジュアルを考えるときにも、こんな風景のあんな写真があればいいなと想像しやすくなりますし、色々なカメラやレンズで撮っていると視点の引き出しが増えます。
また、自分で撮影をすることで、プロカメラマンのこだわるポイントが少し想像できるようになり、さまざまな場面で会話がしやすくなります。
(おまけ)予算のない案件では自らがカメラマンになることもあります。

この記事を書きながら思い出したエピソードがあります。
昔初めて冊子の撮影に立ち会ったとき、経験豊富なプロのカメラマンが 「これは表紙の写真、空を空けとくからタイトルいれてね。」 とか、「この集合写真は人数多いから、見開きで使える様にノドの部分には人が来ないように並んでもらいましょう。」とか編集会議に出ているわけでもないのにエスパーのように撮影していて驚いたのを覚えています。
幸か不幸か編集チームは素人集団だったので、全部採用させてもらいました。
分業だからこそ他の工程のクリエイティブに理解があると重宝され、彼が仕事に困らないのも納得でした。

まとめ

今回は写真撮影の話が中心でしたが、写真に限らずデザイナーは、映画や旅行など、多くの知識や経験、感情に触れる機会を持ったほうがいいと思います。
多くのインプットが自分の感性の糧となり、遠くに離れた一見関係性のない点と点をつないで新しい発想と感動を生み出す原動力になります。
デザイナーのみなさん、次の週末はカメラを片手に街や公園に行ってみませんか?

Orisaka

代表取締役 CEO

武蔵野美術大学 造形構想研究科 修士課程 造形構想専攻クリエイティブリーダーシップコース修了
中央大学理工学部卒業、STRAMD第7期生
製版DTP、映像制作、プログラマー、ウェブ制作 などを経て、2006年 ギャラリーバーノイエ創業、2008年 株式会社マイロプス代表取締役 就任。
趣味はバスケットボールと釣り。千葉県出身。
Twitter @toshi_104i

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