最高の仕事道具。指が記憶する打鍵感と、深すぎるカスタマイズ沼 HHKBについて。
皆さん、こんにちは。
皆さんは、日々使う仕事道具にどこまでこだわっていますか? 私は、1日中触れる道具だからこそ、徹底的にこだわりたいと考えています。そのこだわりが行き着いた先が、HHKB(Happy Hacking Keyboard)でした。今回は、なぜHHKBが多くのプロフェッショナルに選ばれるのか、そして私がその魅力にどっぷり浸かっているのか、その理由をお伝えしたいと思います。HHKBの購入を検討されている方の参考になれば幸いです。
※この記事ではHHKBを改造して使用する事例を紹介していますが、改造を推奨するものではありません。ご自身の責任においてご判断ください。
目次
なぜHHKBを選んだのか
当時、私は自宅ではMac、職場ではWindowsと、それぞれ異なるOS環境でPCを使っていました。その環境の違いがタイピング時にどうにも違和感として残り、「持ち運びできるキーボードが1つあれば、家でも職場でも同じ使い心地となり、この問題は解決するのではないか」と考えたのです。そうして、「買うなら最高のものを」という思いからHHKBを手にしました。
HHKBを初めて手にした時、まず感じたのはそのコンパクトさと独特のキー配列でした。正直なところ、最初は戸惑いの連続でした。特にパンタグラフやシザーキーボードの浅い打鍵感に慣れていると、なかなか指がキーの配置を覚えてくれず、慣れるまでには少々時間を要しました。
しかし、その戸惑いを乗り越えた先に待っていたのは、HHKBならではの「指が記憶する」という独特の打鍵感でした。キーを押し込んだ時の「スコスコ、コトコト」という心地よい感触、残響、そして指が吸い付くようにキーに馴染む感覚は、他のキーボードでは味わえないものです。一度この打鍵感を体験してしまうと、もう後戻りはできません。まるで、指とキーボードが一体になったかのように、思考がそのまま文字になるような感覚でタイピングができるようになりました。これが多くのプロフェッショナルに選ばれる一つの理由だと思います。
止まらないHHKBカスタマイズ沼
HHKBのもう一つの大きな魅力は、その高いカスタマイズ性にあります。私はこれまでに、キーボード本体に加えて、キートップ、ラバードームの交換、さらには有線モデルの無線化に至るまで、時間と情熱を注ぎ込んできました。(繰り返しになりますが、改造を推奨しているわけではありません。)
特にこだわったのは、キートップとラバードームの交換です。好みのカラーや素材に変えることで、見た目の印象が大きく変わるだけでなく、指先の感触も細かく調整できます。また、ラバードームの交換によって、打鍵感をさらに自分好みに調整することも可能です。日本では情報が少ないため、海外のキーボード専門サードパーティメーカーのDiscordに参加し、情報収集も行いました。
沼その1:ラバードーム交換
ラバードームの交換は、打鍵感に最も大きな影響を与えます。私はキーボードにおいて、押している感覚がないとタイピングのリズムが崩れるため、しっかりとしたタクタイル感を求めていました。その結果、deskeysというメーカーの製品が最適との情報を掴み、早速注文しました。
メインで使っているHHKB Professional HYBRID Type-S(私はJIS配列を愛用しています)は単価が高く、これから改造しようという時に失敗して仕事で使えなくなってしまうのは避けたいので機能は劣りますが、既に終売となっているHHKB Professional JPの中古を安価で購入しました。このモデルは無線に対応していないのとキーアサインが限定的という以外、HHKB Professional HYBRID Type-Sと使い心地は何も変わらないのに安価です。また、状態が悪ければさらに安い中古相場になるので、今回は状態の悪いものを選択しました。(自身でリファービッシュするつもりだったので状態は厭いません。)


キートップを外してみるとかなりの汚れでしたが、清掃すれば問題ありませんのでバラバラにして清掃しました。

写真を取り忘れていますが、ケースの黄色の黄ばみはRetr0brightという方法に挑戦し、こちらの写真の色まで戻すことができました。過酸化水素を多く含有した漂白液に漬け込んで太陽にさらして、曇りの多い11月〜12月に大体2週間ほど野外に放置した結果です。

キートップに印字が無いのは消えてしまったのではなく、この時点で無刻印のキートップを購入し交換しているためです。
元々はグレーのラバードームが付属していますが、

こちらをdeskeysのラバードームに交換していきます。純正のラバードームの感触は決して悪くは無いのですが、反発力に乏しいと感じます。
deskeysのラバードームは種類豊富ですが、Discord上の情報ではDES-DOMES CARROTSというブランドが一番タクタイル感に優れているとのことでしたので、こちらを選択しました。35g、49g、60gというラインナップで、数字が大きいほど硬く重くなります。手始めに49gを購入し、しばらく使い込んでみて、もう少し軽い感じの35gを追加購入しました。35gは非常に軽く、キーを押し込んでから戻ってくるタイミングが微妙に自分に合っておらずミスタッチが増えてしまったため、あまり使用しない数字キーやファンクションキーだけに設置し、英字キーは49gの配置にしました。現在はこれで落ち着いています。

沼その2:もう一台のHHKBと無線化
持ち運びに便利なHHKB1つがあれば自宅と会社の双方で同じ体験ができると思っていたものの、毎日の出社でそもそも持ち運ぶのが面倒だと思い、自宅と会社を据え置きにして2台を完全に同じタクタイル構成にし、どこでも最高の環境で作業したいと考えました。メインのHHKB Professional HYBRID Type-Sは「墨」という色のブラックを使っていましたが、埃が目立つことと、夕方に日が沈んで部屋が暗くなるとキーが見えないという問題があったため、白への乗り換えも検討していました。
次に入手できたのは同じく終売モデルのHHKB Professional JP Type-S 白(中古)でした。

自宅の環境だけは、どうしても無線環境が欲しかったのですが、HHKB Professional JPは有線にしか対応していません。
しかし、探せばあるもので、HHKB Professional JP専用に無線化できるコントローラー基盤(HHKB-BLE)が海外では販売されています。
こちらを中国から入手し、手順通りに組み立てるだけで簡単に実装できました。

書き始めるとあまりに長くなるため詳細は省きますが、キーボードを認識させるのに再フラッシュというファームウェア更新が必要で、Macの場合ターミナルから基盤に対してのコマンド入力が必要となります。
キーアサインも自由自在に変更が可能になります。
沼その3:EDIUSキーボードからのキートップ流用
Grass Valley社のEDIUSキーボードという製品があります。このキーボードはノンリニアビデオ編集ソフトに特化したショートカットがキートップ色で分かるようになっている専用のキーボードです。HHKBを知るにはREALFORCEをまずは知っておいたほうがよくその製造元は東プレという日本のメーカーになります。HHKBは東プレのOEM品ですが、EDIUSキーボードも東プレのOEM品になります。どちらも静電容量無接点方式で、互換性があります。
HHKBはキートップのバリエーションがメカニカルキーボードに比べると非常に少なく、海外製品でもほとんど見当たりません。メカニカルキーボードと静電容量無接点式のキートップは塑性方法が全く違うため、転用することはできません。そのため、キートップを交換したいと思ったら、純正品の数少ない色で我慢するしかないのが現状です。
単に色が変わればそれでいいという問題ではなく、キートップの色が違うということは素材の組成そのものが色によって違うため、キートップが硬いか柔らかいか、に影響がありそれは最終的に打鍵感に影響します。
しかし交換して打鍵感が良くなるという情報は得られなかったので半分賭けでしたが、こちらも入手しました。

これをHHKBに載せ替えるとこんな感じになります。

結果とても満足いくタクタイル感、操作性、視認性となり今はこちらの形にして落ち着いています。これ以上の快適さは手に入らないというか存在し得ないという気さえします。
他に入手したもので富士通高見澤コンポーネントのキーボードも手に入れたのですが、こちらは静電容量無接点式ではないので、じっくりカスタマイズについて検討していきたいと思います。
他にスライダーやスプリングについても2、3伝えたいことがあるのですが長くなるので省略します。

HHKBはどんな人におすすめか? 万人におすすめの理由
HHKBのカスタマイズは、私のように自分だけの最高の打鍵感や作業環境を追求する過程で、よりHHKBの本質的な魅力を引き出すためのものです。そして、その魅力こそが、タイピングをするすべての人にHHKBをおすすめできる理由だと私は考えています。
純正品だけでも相当な違いを感じられるはずだと思います。
私も純正品だけ5年以上使っていて何の不自由もありませんでしたが、求めれば求めるほどにそれだけに留まらないのがHHKBの底知れない魅力です。
「キーボードにそこまで時間や情熱をかける必要があるの?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、私は毎日1日中触れる仕事道具だからこそ、最高の体験を追求することは、日々の作業効率やモチベーションに直結すると考えています。
HHKBは、単なる入力デバイスではなく、あなたのパフォーマンスを最大限に引き出すための「投資」となり得ると思います。何も改造しなくても初期の慣れ、キー配列の変更といったハードルはありますが、それを乗り越えた先には、想像以上の快適さと満足感が待っているはずです。
まとめ
HHKBは、一度使い始めるとその魅力から抜け出せなくなる、不思議な魅力を持ったキーボードです。その独特の打鍵感、洗練されたデザイン、そして無限のカスタマイズ性。これらが一体となり、私にとってかけがえのない仕事道具となっています。
もしあなたが今、最高のキーボードを探しているのなら、あるいは、キーボードに対する考え方を変えたいと思っているのなら、ぜひ一度HHKBの世界を体験してみてください。きっと、あなたのタイピングに対する認識が大きく変わるはずです。
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